令和3年度教育行政執行方針
はじめに
世界的に蔓延している新型コロナウイルス感染症の収束が依然として見通せず、経済活動への影響が懸念されるとともに、少子高齢化や人口減少が進む社会の中、教育委員会としては、平成30年からスタートした「第2期八雲町教育推進計画」を踏まえ、子どもたち一人一人が自分のよさや可能性を自覚するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協議しながら様々な社会変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、八雲町の教育理念の具現化を図ってまいります。
これまで、学校教育においては、「渡島の教育は二海から」のスローガンの下、全ての小・中学校における「主体的・対話的で深い学び」の確実な実現に向けた授業改善に積極的に取り組むとともに、学校を核とした地域全体で子どもたちの学びや成長を支える「社会とともにある学校」を目指した「小中一貫型コミュニティ・スクール」の推進に取り組んでまいりました。
また、令和2年度は、すべての児童生徒に一人一台の学習用端末を整備し、ICTを基盤とする先端技術を活用し「個別最適化された学び」と「創造性を育む学び」の実現に向けた、いわゆる「GIGAスクール構想」の環境整備を進めてまいりました。
あわせて、教職員が意欲とやりがいをもって健康に働くことができる環境の整備と子どもたちと向き合う時間を生み出し、良質な教育の提供がなされるよう「教職員の働き方改革」にも取り組んでまいりました。
社会教育においては、多様化する町民のニーズを把握し、八雲町の芸術文化活動の振興や文化財の保存と活用、読書活動の推進等を通して社会参加の意欲を高める学習の場や機会を提供するとともに、町民一人一人が学習を積み重ねる中から、地域に関わりをもち、つながりを深め、地域のコミュニティ形成やまちづくりの担い手となる人材の発掘・育成のための支援に取り組んでまいりました。
さらに、社会体育・スポーツにおいては、町民がスポーツに親しみ健康寿命を保つため、少子高齢化に適応したスポーツの機会を継続して展開するとともに、健康で住みよいまちづくりと心身の健康づくりを施策の基本とし、町民のスポーツライフの選択肢の拡大と関係機関や団体との連携・協働による事業を展開してまいりました。
教育委員会としましては、誰もが生まれ育った環境に左右されず、安心して質の高い教育を受け、生涯にわたって学び続けることができる環境を整えるとともに、次代を担う子どもたち一人一人が予測することが難しい未来社会を生き抜いていけるよう、八雲町の教育の一層の充実・発展に取り組んでまいります。
また、新型コロナウイルス感染症対策については、学校や関係機関、保護者、関係団体などと連携し、引き続きその対応に万全を尽くしてまいります。
学校教育
1 自他を認め持続可能な社会の創り手を育む教育活動の展開
今日の学校に求められている、子どもたちの「生きる力」を確実に育んでいくためには、学校がそれぞれの課題の確実な改善を目指し、「カリキュラム・マネジメントによる学習効果の最大化」を図るための教育課程の編成を支援するとともに、地域社会との連携・協働により「社会に開かれた教育課程」を推進し、「社会とともにある学校」を実現してまいります。
子どもたちにとって必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明らかにした集中的な取組として、これまでの様々な調査を通して、八雲町の子どもたちの課題として見えてきた、文の構造を正しく理解したり、既存の知識と新しく得られた知識から論理的に判断したりするなどの、いわゆる「読解力」を育む教育活動をすべての小・中学校の教育課程に位置付け、総がかりで検証・改善に取り組んでまいります。
さらには、児童生徒に導入された学習用端末を効果的に活用し、これまでの知・徳・体を一体的に育む教育の強みを維持・発展させつつ、子どもたちの個性や置かれている状況に応じた最適な学びを目指して教育活動を展開してまいります。
学習用端末は、学校内の教育活動での活用に限らず、家庭において子どもが教員と双方向にコミュニケーションを図りながら学習に取り組んだり、AI搭載の学習教材を活用し個々の学習状況に応じた家庭学習に取り組んだりするなど、子どもたち一人一人の学びを保障し、その質を高めてまいります。
また、ALT(外国語指導助手)を継続して複数配置し、小学校から中学校まで生きた英語教育を実践し、豊かな国際感覚が育まれるよう支援するとともに、北海道教育委員会の加配事業を積極的に活用した小学校における専科指導や、少人数指導等、学習指導の工夫・改善に取り組んでまいります。
あわせて、校長会、教頭会と緊密に連携を図りながら、最前線で教育活動を担う教員の実践的な指導力を高める研修を積極的に推進してまいります。
2 小中一貫型コミュニティ・スクールの充実
八雲町における「小中一貫型コミュニティ・スクール」の取組は、4年目を迎え、それぞれの中学校区においては、学校運営協議会を中核に据え、地域・保護者と一体となった教育活動が展開されてきております。
地域全体がパートナーとして学校を支え、地域ぐるみで子育てが効果的に行われるよう、各中学校区の代表により構成する「八雲町コミュニティ・スクール連絡協議会」を通して、それぞれの取組の成果や課題を広く全町的に共有し、参画する保護者や地域の方々の意識の高揚を図るとともに、学校と地域の連携を一層強化し、八雲の自然や歴史、文化などを学習する機会の充実に活かしてまいります。
小中一貫教育においては、義務教育9年間を一つのまとまりとして捉えた教育課程を編成し、小学校と中学校を円滑に接続するとともに、一定の教育水準を保障するよう乗り入れ授業など教育活動の一層の充実を図ってまいります。
3 個々の教育的ニーズに応じた教育の充実
子どもたちが、互いに思いやり、支え合いながら社会の一員として生きていくためには、健やかな心身の成長が極めて大切であり、それぞれの発達段階や状況に応じた適切な教育環境を整えることが重要であると考えています。
「いじめ」や「不登校」など、子どもたちを取り巻く様々な問題については、定期的なアンケート調査や随時の教育相談により実態把握に努めるとともに、関係部署や関係機関との連携・協働やすべての小・中学校に配置するスクールカウンセラーの助言等を生かして、早期解決に向けた支援を継続して行い、子どもたちの心身の健全な育成や安定した教育活動を推進してまいります。
特別支援教育においては、個々の教育的ニーズに応じた支援を行うため、特別支援教育支援員を適切に配置するとともに、医療的ケアが必要な児童生徒にはそれぞれ看護師を派遣し対応するほか、発達障がい等の特別な支援が必要な児童生徒の進級・進学に向け、関係部署との連携の下、継続した支援や適切な教育環境の確保に努めてまいります。
また、「特別支援教育連携協議会」の一層の充実を図り、幼稚園・保育所や小・中・高等学校の教員、関係部署等との異業種研修のほか、各学校に出向いて行う発達障がい等の理解や家族支援のための研修を継続して実施するとともに、卒業後も見据えた継続的な支援体制の構築に取り組んでまいります。
経済的理由により就学困難と認められる世帯に対して行う就学援助については、対象とする援助項目を拡充し、併せて制度の周知を徹底するとともに、必要とする時期に適切な支援が実施できるよう取り組んでまいります。
また、高校や大学等への進学者に対する奨学金の貸付事業や、産業後継者の育成を目的とした農漁業、商工業後継者に対する養成奨学費の助成を引き続き実施してまいります。
食に関する指導については、子どもたちが食に関する知識や能力等を発達段階に応じて総合的に身に付けることができるよう、学校給食を生きた教材として活用し進めてまいります。
また、子どもたちが食を通して郷土への理解を深めることができるよう、学校・家庭・地域が連携を図るとともに、さらに学校給食センター運営委員会の意見などを参考にし、町内各地域の食文化継承や地産地消の推進に努めてまいります。
令和2年度に供用開始した学校給食センターに新設したアレルギー調理室の機能を十分に活かして、食物アレルギー疾患を有する子どもたちに対し「八雲町立学校における食物アレルギー対応指針」に基づく取組プランによる対応食を調理し提供してまいります。
また、平成30年度より実施している学校給食費無償化は、保護者負担を軽減し、安心して子育てできる環境の充実を図る重要な支援策であることから、引き続き実施してまいります。
4 安全・安心な教育環境づくりの推進
児童生徒の安全確保は信頼される学校づくりの基盤であり、学校においては、危機管理マニュアルの点検・見直し、防犯・防災教室の実施など、地域や家庭と連携した取組を推進し、地震や津波等の災害発生の際に適切な行動ができるよう備えてまいります。
さらに、新型コロナウイルス感染症対策のため、国から示された衛生管理マニュアルを踏まえ、適切に対応してまいります。
各学校の施設や設備、教職員住宅については、適切な保守管理に努めるとともに、建築から40年以上が経過している八雲中学校校舎棟の大規模改修に向けて、実施設計に着手してまいります。
社会教育
1 町民自らが主体的に学び行動する生涯学習社会の実現
町民が心豊かに充実した日々を過ごすためには、生涯を通じて主体的に学び、その成果を活かすことができる社会の実現を図ることが極めて重要であると考えております。
町民の学習ニーズに応じて、地域の教育資源の活用や学習機会と情報提供の充実を図るとともに、社会教育団体と連携した町民自らが企画・運営に積極的に関わる事業への支援など、町民が地域への関心を高め主体的に学ぶ環境の整備や機会の創出に努めてまいります。
また、生活に豊かさをもたらし、創造性のある地域の基盤となる町内各地域における芸術文化活動を推進するとともに、「木彫り熊講座」の開催や八雲山車行列、八雲さむいべや祭りなど、地域に根付いた祭りが町民の財産として認識が高まるよう支援してまいります。
八雲町の文化財については、適切に保存し、各種学習会や講座の開催、近隣市町と連携した取組や情報発信など、郷土への愛着や誇りを育み、歴史文化への関心と理解がより深まるよう有効に活用するとともに、令和元年度から取り組んでいる合併後15年間の町史を取りまとめます。
社会教育関係施設については、役場庁舎等建設基本計画に基づいて引き続き検討を進めるとともに、現施設の老朽化に対応し、より利用しやすい施設の維持管理に努めてまいります。
町立図書館
図書館の運営については、引き続き適切な資料収集や町民サービスの提供に努めつつ、計画的に移動図書館を運営し、各施設内の図書コーナーを充実させ、図書館から遠い地域の町民への読書啓発活動を促進するとともに、「子どもの読書活動推進計画」に基づき、家庭や地域、学校など社会全体で子どもたちが読書に親しむ機会の整備・充実を図ってまいります。
さらに、図書館運営には欠かせない、ボランティアの方々による様々な文化的な事業の企画・運営を積極的に支援するとともに、ロビーを活用した展示についても町民の活動の成果を伝える場・心安らぐ場としての利用促進に努めてまいります。
総合体育館
1 心身の健康を目指した社会体育・スポーツの確立
八雲町のスポーツ振興は、4町連携によるスケールメリットを活かした事業や体育協会、スポーツ少年団本部などの関係団体の献身的な活動によって支えられ継続してきており、今後も、町民のスポーツに対する興味・関心を高め、自主的で継続したスポーツ活動を促すとともに、スポーツ活動を通して豊かな人間関係を深め、あたたかく活気あふれるまちづくりへの好循環につなげていくことが重要であると考えております。
令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症対策によりスポーツの活動機会が限られた中にあっても、八雲町出身のアスリートや学生をはじめ、町内の子どもたちが各種大会で優秀な成績を納め、町民に感動と勇気を与えてくれました。
今後も、子どもたちが望ましい環境でスポーツ活動に取り組むことができるよう、関係団体と緊密に連携し指導者の発掘と養成に取り組むとともに、アスリートと交流する場を設けるなどスポーツ機会の充実を図ってまいります。
また、職場や地域単位で取り組めるスポーツ大会、手軽に取り組めるスポーツ教室の企画、さらには見るスポーツの推進など、スポーツライフの選択肢を広げながら、世代に応じた健康の維持・増進や生活習慣病予防の啓発に努め、町民の健康づくりを推進してまいります。
そのため、多様化するライフスタイルに応じたスポーツ情報の発信やスポーツ機会の確保と提供に努めるとともに、体育施設の長期的な管理計画に基づく長寿命化のほか、誰もが安全・安心にスポーツに親しめる施設の維持管理に努めてまいります。
おわりに
以上、令和3年度の教育行政の執行に関する方針の大綱について申し上げましたが、自然豊かな八雲の地において、ふるさとに誇りをもち、これからの社会を担う人材の育成や地域づくりの基盤は教育にあるとの信念の下、学校・家庭・地域・行政が一丸となって、八雲町の教育の充実・発展に取り組んでまいりたいと考えておりますので、議員並びに町民の皆様の御理解と御支援を賜りますよう、心からお願い申し上げます。
令和3年度 教育行政執行方針 [PDFファイル/303KB]