八雲町立学校の教育職員の在校等時間に係る上限等の方針
1 方針策定の趣旨等
- 地方公務員である公立学校の教育職員も条例や規則等の対象となるが、公立学校の教育職員については、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「給特法」という。)が適用され、所定の勤務時間外に超過勤務命令に基づいて業務を行うのは、いわゆる「超勤4項目」に関する業務の場合のみとされていることから、それ以外の業務は、条例や規則等の対象から除外される。
- 給特法の仕組みにより、所定の勤務時間外に行われる「超勤4項目」以外の業務は教育職員が自らの判断で自発的に業務を行っているものと整理されるが、学校の管理運営一切の責任を有する校長や教育委員会は、教育職員の健康を管理し働き過ぎを防ぐ責任があり、こうした業務を行う時間を含めて管理を行うことが求められているものの、この時間については勤務時間管理の対象とはならず、勤務時間管理の意識の希薄化や長時間勤務、適切に公務災害認定が行われない等の要因の一つであると考えられている。
- 「超勤4項目」以外であっても、校務として行うものについては、超過勤務命令に基づくものではないものの、学校教育活動に関する業務(授業等の教育活動のほか、教務、児童生徒指導、教材教具管理、文書作成処理などの事務、外部関係者との連絡調整、学校教育の一環として行われる部活動等)であり、所定の勤務時間外に行っている業務としては「超勤4項目」に関する業務以外のものが大半を占めている現状である。
- 文部科学省は、平成31年1月に「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)を策定し、「超勤4項目」以外の業務も含めて、しっかりと勤務時間管理を行うことが、学校における働き方改革を進めるために不可欠であることを定めた。令和元年12月には、給特法の一部を改正する法律が公布され、ガイドラインは法的根拠のある「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」(以下「指針」という。)へと格上げされた。
- 指針において、上記の条例や規則等では対象とはならない、「超勤4項目」以外の業務のための時間についても「在校等時間」として勤務時間管理の対象にすることを明確にした上で、その上限時間が示された。また、給特法第7条の規定に基づき、指針を告示として公示し、その適用は、令和2年4月1日からとしている。
- 八雲町においては、給特法第7条に規定されているとおり、教育職員の服務を監督する教育委員会には教育職員の健康及び福祉の確保を図るために一定の措置を講ずる責務があること、また、学校の管理運営一切において責任を有するものであり、業務分担の見直しや適正化、必要な執務環境の整備に加え、教育職員の勤務時間管理及び健康管理についても責任を有していることから、令和2年3月に八雲町学校管理規則の一部を改正するとともに、これまでの「教職員の働き方の改善にかかる取組プラン」を廃止して新たに「八雲町立学校の教育職員の在校等時間に係る上限等の方針」(以下「上限方針」という。)を策定し、指針に記載されている取組を適切に実施することを目指すものとする。
- 平成30年7月に公布された働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により、民間企業等については、いわゆる36協定による時間外労働の上限規制が新たに規定された。このような労働法制の転換を踏まえ、国家公務員については、人事院規則において超過勤務命令の上限時間が新たに規定され、地方公務員については、国の人事院規則を踏まえ、各地方公共団体において、超過勤務命令の上限時間を条例や規則等で定めることとなった。
2 業務を行う時間の上限
教育職員の在校等時間から、北海道学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例で定める勤務時間等を減じた時間(以下「時間外在校等時間」という。)を1か月で45時間以内、1年間で360時間以内とする。 |
- 対象の範囲
- 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第2条第2項に規定する教育職員(校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師、実習助手、寄宿舎指導員)
- 事務職員等については、「36協定」における時間外労働の規制が適用される。
- 上限方針における「勤務時間」の考え方
地方公務員法上の「勤務時間」は、基本的に労働基準法上の「労働時間」と同義であると考えるが、教育職員の専門性や職務の特徴を踏まえ、また、教育職員が超勤4項目以外の業務を行う時間が長時間化している実態も踏まえると、正規の勤務時間外に教育職員が学校教育活動に関する業務を行っている時間を含めて外形的に把握することができる時間を当該教育職員の「在校等時間」とし、服務監督教育委員会が管理すべき対象とする。
具体的には、正規の勤務時間外において超勤4項目以外の業務を行う時間も含めて教育職員が在校している時間を基本とし、当該時間に、「校外において職務として行う研修への参加や児童生徒等の引率等の職務に従事している時間として服務監督教育委員会が外形的に把握する時間」「各地方公共団体が定める方法によるテレワーク等の時間」を加え、「正規の勤務時間外に自らの判断に基づいて自らの力量を高めるために行う自己研鑽の時間その他の業務」「休憩時間」を除いた時間を在校等時間とする。。 - 上限時間の原則
- 1か月の在校等時間の総時間から、北海道学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例(以下「条例」という。)で定めた勤務時間の総時間を減じた時間(以下「1か月時間外在校等時間」という。)が45時間を超えないようにすること。
- 1年間の在校等時間の総時間から条例で定めた勤務時間の総時間を減じた時間(以下「1年間時間外在校等時間」という。)が、360時間を超えないようにすること。
- 特例的な扱い
上記Cを原則としつつ、児童生徒等に係る通常予見することのできない業務量の大幅な増加に伴い、一時的又は突発的に所定の勤務時間外に業務を行わざるを得ない場合においては、次に掲げる時間及び月数の上限の範囲内とする。- 1か月時間外在校等時間 100時間未満
- 1年間時間外在校等時間 720時間
- 1年のうち1か月時間外在校等時間が45時間を超える月数 6月
- 連続する複数月(2か月、3か月、4か月、5か月、6か月)のそれぞれの期間について、各月の1か月時間外在校等時間の1か月当たりの平均時間 80時間
3 教育職員が業務に専念できる環境の整備
1 支援員等の配置の促進
- 学習等をサポートする支援員の配置の充実を検討する。
- 特別な教育支援が必要と考えられる児童生徒等の支援を行う特別支援教育支援員等の配置の充実を図る。
- 学校事務職員の兼務発令をし、事務職員の配置のない小規模校における事務処理の負担を軽減する。
- スクールヘルスリーダーの制度を活用し、養護教諭の配置のない学校の負担を軽減する。
2 ICTの活用による会議等の効率化と教材の共有化等による授業準備等支援の充実
- 校務用パソコン(全教職員に一人一台配置)を活用した情報の共有化や教材の共有化を図り、会議のペーパーレス化や授業準備等の時間軽減を推奨する。
- 学校や児童生徒に関する様々な情報をデジタル化し、共有することで教育職員等の事務負担の軽減を図る方策を検討する。
3 小中一貫型コミュニティ・スクールの充実を図り、地域・家庭との協働による学校支援体制づくりの推進
- 学校運営協議会を中核とした、学習支援や生徒指導支援のサポート体制づくりを進める。
- 社会教育や社会体育との連携を図り、地域の人的物的資源の学校教育への積極的活用を図る。
- 町内会等と連携を強め、児童生徒の安心安全を守る体制の強化を検討する。
4 町及び町教委主催作品募集等にかかわる業務の負担軽減の推進
- 学校として応募するものについて精選できるよう町及び町教委主催の作品募集等の年間計画を作成し整理する。
4 部活動の指導にかかわる負担の軽減
1 部活動休養日の完全実施
- 部活動の活動時間は、平日2時間程度、休日3時間程度とする。
- 部活動の休養日は、土日のいずれか1日と、課業日のうちの1日の週2日及び学校閉庁日とし完全実施する。(平日週1日52日+週末週1日52日+学校閉庁日年間9日)
- その他、「八雲町立学校における部活動の方針(平成31年4月)」によることとする。
2 複数顧問の効果的な活用
- 一人の教育職員等に過度な負担のかからないように、複数顧問の配置を促進する。
※上記内容については、各少年団指導者等にも周知し、「運動の過多によるけがの防止」や「バーンアウトの防止」に配慮した指導を行うよう要請する。
5 在校等時間を意識した働き方の改善
1 教職員の在校等時間に対する意識啓発の推進
- 職員会議日を定時退勤日に設定するとともに、月2回以上の定時退勤日を実施する。
- 原則として勤務終了時刻より遅くとも2時間後までに閉庁する。
※学校行事前や地域との会議などやむを得ない場合も21時には閉庁することを徹底する。 - 週休日の振替や変形労働時間制度を適切に実施する。
- ICTを活用し毎日の出退勤時刻の記録を行い、在校等時間を意識した働き方を教育職員等に浸透させる。
※1週間当たりの在校等時間が60時間を超える職員に対しては管理職員が当該職員と業務全般の内容や優先順位等を協議しながら、時間外在校等時間の縮減方策を具体的に定めるなどして、適切な在校等時間となるよう取り組む。
2 長期休業中における一定期間の「学校閉庁日」の設定及び年次有給休暇取得の促進
- 各学校は夏季休業期間中に3日間(土日祝は除く)、年末年始に6日間の連続した学校閉庁日を合計9日間設定し、教育職員の年次有給休暇の取得を促進する。
- 学校閉庁日は、部活動休養日とする。
※ただし、町主催行事等への参加は、この限りではない。 - 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進する。
3 管理職のマネジメント研修の実施
- 管理職員に対し、組織管理や時間管理、健康安全管理などのマネジメント研修を実施し、意識改革を図る。
4 事務機能の強化・業務の効率化
- 教育職員と事務職員との間での一層の業務連携が図られるよう努める。
6 教育委員会による学校サポート体制の充実
1 客観的な方法による在校等時間の把握と記録の管理・保存
- 各学校において、教育職員の在校等時間のICT等を活用した客観的な方法による計測が行える環境整備を進めるとともに、提出された計測結果は公務災害が生じた場合等において重要な記録となることから公文書として5年間、管理及び保存する。
2 教育職員の健康及び福祉の確保
- 時間外在校等時間が、「2 業務を行う時間の上限」のDにある『特定的な扱い』を超えた教育職員に医師による面接指導を実施する。
- 教育職員の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施する。
- 心身の健康問題についての相談窓口を設置する。
- 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、または教育職員に産業医等による保健指導を受けさせる。
(参考)働き方改革推進法による改正(平成31年4月1日施行)後の労働安全衛生法体系において、- 事業者は一週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者等に対し、通知しなければならないこと。
- 医師による面接指導の対象となる労働者の要件が、一週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者に見直されたこと。
などが規定された。
3 取組実施状況の把握と検証
- 時間外在校等時間の長時間化を防ぐための業務分担の見直しや適正化の指導・助言を行うとともに、上限時間範囲を超えた場合には、該当校における業務や環境整備等の状況について事後検証を行う。
4 勤務管理に関する各制度の利用の推進
- 週休日の振替や変形労働時間制度等の積極的活用を推進する。
5 保護者や地域住民等の理解を得るための取組の促進
- 上限方針の内容等について、保護者、地域住民、町役場各部局の理解促進を図る。
7 その他
1 留意事項
- 時間外在校等時間の上限については、教育職員がその上限までが勤務することを推奨する趣旨ではなく、他の長時間勤務の削減方策と併せて取り組まれるべきものであること。決して、学校や教員等の上限時間の遵守を求めるのみであってはならないこと。
- 休憩時間や休日の確保等に関する労働基準法等の規定を遵守すること。
- 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
- 上限時間の遵守を形式的に行うことが目的化し、真に必要な教育活動をおろそかにしたり、実際より短い虚偽の時間を記録に残す、又は残させたりすることがあってはならないこと。
- 上限時間を守るためだけに自宅等に持ち帰って業務を行う時間が増加してしまうことは、そもそもの趣旨に反するものであり、厳に避けること。仮に業務の持ち帰りが行われている実態がある場合には、その実態把握に努めるとともに、業務の持ち帰りの縮減に向けた取組を進めるものとすること。
- 上限方針は、学校の設置者や学校の取組状況などを踏まえ、必要に応じて、内容の見直しを行う。
令和2年3月17日 教育長決定
八雲町立学校の教育職員の在校等時間に係る上限等の方針 [PDFファイル/560KB](令和2年4月改定)