「雪中行軍始末」

 明治35年に、八甲田山雪中行軍遭難救助に参加した、アイヌ捜索隊を中心に描かれた小説で、辨開凧次郎たちの捜索の様子が生き生きと描かれています。筆者の小田原金一は、青森県幸畑村に生まれ、祖父は捜索隊の嚮導(きょうどう:地元の山の地形を知り尽くした案内人)として、捜索にあたっていました。当時は幸畑村や田茂木野村のどの家でも、一家を上げて捜索に関わっていたそうで、筆者の幼少時には周りに雪中行軍遭難の捜索に実際にあたった人たちがいて、小さい頃からの関心事の一つであったそうです。筆者は、この小説を書き上げるために、歩兵第五聯隊編『遭難始末』や「東奥日報」の新聞記事などを参考に、関係者への聞き取りなどを基にして、事実と虚構の交えた小説として書き上げたと思います。
 小説の中では、辨開たちは必ずしも捜索に進んで加わった訳ではなく、むしろ初めは拒否していたそうです。そこには和人への不信感があったそうで、実際に捜索に臨んでからは、決して和人に負けたくないという意地の様なものがあり、アイヌ犬を駆使しての捜索は、地元案内人も舌を巻く活躍であったそうです。
 八甲田山雪中行軍遭難に関する著書は多くありますが、辨開たちを中心に描いた小説は外にないと思いますので、興味のある方は図書館にありますので、ぜひ読んでみてはどうでしょう。

雪中行軍始末
雪中行軍始末

投稿者:しんちゃん


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